作者の言葉
離婚,子供との別れ,経済的不安,入退院の繰り返し・・・・・
さまざまな人生の挫折を味わった末,我流で描き始めて十年。
生きることは苦し過ぎる。しかしそれでも人生は素晴らしい。
くじけそうになる自分をいっしょうけんめいに応援するために描いた
その自分の絵に励まされて,泣いたり笑ったりの日々を今日まで
生き抜いてこられたのと思っている。
だから,私の描くものは,絵というより,日記のようなものと言えるかも
知れない。そして私にとって描くことは,叫びであり,つぶやきであり,祈りであり
感謝である。
こころ豊かに日々を重ねて,やがて,じっと人生を見つめる人々
の魂とひびき合える日が来ることを祈ってやまない。 環水
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『行水』-1-
赤く染まった雲がゆく
宵の儀式のはじまりに
ひととき風も吹き止んで
かすかに響く水の音
行水つかう ねえさんの
背がキラキラ 輝やいて
まるで 幻見てるよう
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かすかにせまる宵の色
息を呑んだか ひぐらしの
うたも ひととき遠のいて
ほのかに香る ねえさんの
背のシャボンの泡でさえ
まるで 魔法のガラス玉
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『手伝い』
手伝えないよと言ったけど,重い荷引く母さんの後姿に心が揺れる。
早く早くとせかす友 ,学校がえりの約束に,ずっしり男の仁義も絡む。
遊びたい,手伝いたい 遊びたい,手伝いたいおさなごころが思案にくれる。
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『菩薩』 -1-
女は誰も妖婦に還る刻を持ち 人は誰でも菩薩に還る機を持つ |
『菩薩』 -2-
女は誰も妖婦に還る刻を持ち 人は誰でも菩薩に還る機を持つ |
『鬼子母神』
私にとって描くことは、叫びであり、つぶやきであり、祈りであり感謝である。
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『ぼくのおっぱい』-1-
ある日 赤ちゃんやって来た
ぷくん ぷくん とやわらかな
ほっぺが あまりにかわいくて
ぼくのだいじな おっぱいを
うっかり あげるって言っただけ
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『ぼくのおっぱい』-2-
お兄ちゃんになることとおっぱい ゆずりわたすことぼくの小さな天秤じゃあまりに重くてはかれない
かあさん かあさん こっちのおっぱい きっとぼくのものだとやくそくしてね
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『朽チントシテ猶命脈々タリ咲キ継ガントス』 -1-
その大木は、あまりに不自然な姿で、しかも、すでに朽ち始めていた。
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『朽チントシテ猶命脈々タリ咲キ継ガントス』 -2-
それにもかかわらず、残された一本の枝とその太い幹に、力の限り噴き出すように花を咲かせていた。
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『すみれ草』
どのような状況にあろうとも、
ひとりひとりに秘められた魅力は、
それによって変わろう筈がない。
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