1-07シナリオ [光ファイバの基本特性] 

さて、そういう事で、通信用の光ファイバには、どの位遠くまで届くかという透明性に加えて、多重度がどこまで取れるかという広帯域性が求められます。

このほかの関連特性としては、ファイバ強度や接続の容易さなども基本特性と同じくらいの重要性がありますが、話を簡明に進める為に、ここでは、透明性と広帯域性に限って話を進めます。

透明性は、裏返すと、光損失ですが、すぐに思い浮かぶのは、不純物による吸収ですね。ルビーの赤い色やサファイヤの青い色は、どちらも母材は酸化アルミニュウムですが、ルビーの方はCr、サファイヤの方はCoという不純物の色になります。

それから、紫外吸収赤外吸収は母材の成分で決まる材料固有の損失になります。光ファイバに使う石英ガラスは、成分的には、酸化ケイ素ですので、酸素とシリコンの結合による吸収で決まります。

それから、最後まで残ったのが「水」の吸収でしたが、これも不純物吸収です。ただ、水と言っても、HO、‐OH基、‐Hをさすばあいがありますので、御注意ください。

それから、ガラスの場合には、原子の配列が結晶のような規則的なものから崩れていますので、散乱損失があります。レーリ散乱は空が青く見える原因として聞いたことがあるかと思いますが、光ファイバの場合にも、重要な損失要因になっています。

アカデミックに言うと、レーリ散乱は入射光の波長が変わらずに散乱され、弾性散乱といいますが、波長が変化するブリルアン散乱、ラマン散乱は非弾性散乱と言い、非線形現象のときに出てきます。

伝送帯域の方は、導波管で昔から研究されているものですが、ファイバの構造に関係するモード分散と構造分散、材料に固有の材料分散があります。

光ファイバの開発は、透明性の向上と、伝送帯域の拡大になるわけですが、伝送損失の低減は、材料的な発見的研究になりますが、帯域の拡大の方は、Maxwelの方程式を駆使した、設計的な研究になります。