3-26シナリオ  [結び]:余話一覧

今日のお話をまとめてみますと、光ファイバの開発に中心のお話を借りましたが、私が皆さんにお伝えしたかったことは、余談の方なんですが、忘れてしまったことを追加してまとめてみます。

ひとつは、

1.自己解決能力と協調能力

VADがこんなに短期間実用化に成功した源泉は組織研究力だと思います。世の中は大概、組織研究が主ですから、独創より群創といったことが声高に叫ばれます。ところが学校教育は、大学入試を始め、自己解決能力の強化にばかり向けられているようで、チョットへんですね。

ただ注意しなくてはいけないのは、独創的ないいアイディアをもっている人に、いい情報が集まってくる傾向があるということです。1981年のGordon会議では、論文でしか名前を知らなかった、超一流の人たちと寝食をともにし、その後個人的にも家に呼ばれたり呼んだりとなって,情報は持っている人に集まってくるということを実感しました。

ということで、群創も大事なんですが、それでも皆さんには自己解決能力を高めておいてくださいと御願いしたいと思います。

 

それから、これに関連して、人付き合いで、N型人間とS型人間というのを知っておくといいと思います。人間には、同じバラの花を見ても、単に、素直に、美しいと感動するタイプと、なぜ美しいのだろうと、いちいち、突っ込まないと収まらないタイプとがあります。心理学では、はじめの方の素直なタイプを、感覚型といって、S型人間、突っ込み型の人を、直感型といって、N型人間と性格付けします。S型人間は、職業的には、自分の意思を介在させない、同時通訳なんかに向くといわれます。N型人間の方は研究者向きです。そして、上司と部下の組み合わせで、N→Sの組合せだと、上司は、頼りない部下!、S→Nでは、生意気な部下!と思う傾向があるそうです。これはかなり当たっていると思います。どちらの立場になったにしても、心しておき、自己修正というか、自己納得すると役立つことがあります。

 

次は、

2.本物って何?:ということなんでが、

チョット前に、ミサワホームの社長さんに本物は何だという講演で、木造建築の本物は法隆寺とか、伝統工芸品とかだという風潮があるが、自分のところのプレハブ建材は、スタートは模造品だったけれども、実用化時点では、強度とか耐久性とか、立派な本物だ、マーガリンだって、最初こそバターの代用品だったけれども、今では、コレステロールの無い植物性油脂で、味も素晴らしい、本物バターをしのぐ本物食品になっているという話を聞いたことがありますが、VADの開発では、MCVDに対抗する国産自主技術で、NIH志向だと言っていますが、コーニングの外付け法を縦にしただけではないかと悪口をいう人もいますように、似たところがあると思います。初めッから、ナニが何でもNIHだと言って、時間を費やすのは、必ずしも得策ではないと思います。特に、昨今は、インターネットが発達して、情報交流が容易で、盛んになっていますし、先人もバカではないわけですから、最初は真似から始めてもいいと思います。NIHの精神は忘れないで、いいものは取り入れるというのがいいと思います。

 

三つ目は、3.真のマジシャンは誰か?

これは、 M.エンデの童話で、あらゆる技術をマスターした若きマジシャンと、技術的にはいい加減な老練のマジシャンがいて、真の奇跡を起こせるのはどちらか?という場面で、大衆は老練なマジシャンを選ぶという童話です。真実の羅列では他人は動かない、大衆は騙されたがっている、ということです。

VAD開発では、1975年頃だったと思います。VADの研究開始の一コマで、当時の材料研究としては破格の3億円の予算を獲得するのですが、VADではこんなに大型の母材ができると言って、多成分ガラスで作った巨大な透明母材で上司を動かします。

VADの大型プリフォームは、10年後の1986年になって始めてできたわけですからね。

 

でもね、私も含めて、技術屋さんはどうしても真実を正確に並べたがるんですよね。論文だって、誰が読んでも同じように受け止めるように、一義的な表現を強く意識しますよね。これでいいんだとは思いますが、NHKのプロジェクトXが印象的で面白いのはフィクションだからだと思うんです。

電子立国日本という番組で、LSIの開発物語がありましたが、NTTが全くでてこなかったんですから、絶対に真実では無いと思います。これも、心の片隅にとどめて置くといいと思います。