3-27シナリオ  [結び]:余話一覧(2)

四つ目は、4.行為的直観

これは私の先生から受けた薫陶です。独創は、日夜、努力を積み上げている人がある日ある時ひらめいて、つまり、直観が働いて、新しい概念に飛躍するというものです。西田幾多郎の善の研究にあるそうです。私の家内が、量子力学を改良しようとしたって無理という話です。VADのHe脱水技術や長波長帯の第三の窓発見なんかは、理論的な結論や既存の知識の積上げだけでは、実際を推定しきれなかった例だと思います。

このほか、

5.水晶振動子とデジタル時計:は、

米国は軍需研究で基礎研究に投資して、新技術開発に結び付けていますが、平和国家日本のエレクトロニクスは、通信で新技術を産業技術に育て、家電が商品化で花開かせる構造になっているという話です。

ディジタル時計は水晶振動子とICの組み合わせでできていて、雑誌の付録でも、スイスの高級時計より正確だということで、スイスの時計業界が揺らいだというのは有名な話ですが、

水晶振動子が時間を刻む部品だというのを日本に導入し、水晶の結晶を作り、研き、

産業技術として育て上げたのはNTTの通信技術です。家電業界は、産業技術として確立した水晶振動子とICを組み合わせて、ディジタル時計という新商品に結びつける構造になっています。現在の民営化NTTも、「研究すること」を法律で義務付けられているのは、その名残だと思います。

6.企業の基礎研究:役に立つ基礎研究

「知の泉を汲んで研究し、実用化によって、世に具体的に恵みを提供しよう」というのは、NTTの研究所の石碑に刻まれた初代所長の言葉。新日鉄の基礎研究所に相当する第一技術研究所には、ニュートンのりんごの木が植えてあって、りんごはいつも落ちているが、日夜努力している人だけが気づきことができるという初代所長の言葉があります。NTT基礎研究所の民営化時の研究方針は「学術に変革を誘発する研究をしよう」、つまり、学問そのものも研究対象にしようとということですし、新日鉄の第一技術研究所では分析や計算化学のような全社共通的なサービスも行って、役立つ基礎研究を進めています。どちらも、欠けているものを研究所のモットーにしているような気もします。なんてものも、頭の片隅にとどめておくと、役立つこともあろうかと思います。

以上、まとまりの無い話を致しましたが、私が本日申し上げたかったことは、自分自身の頭でよく考えようという事であります。長時間にわたって、ご静聴有難うございました。