自費出版が盛んです。
なかでも主流となっているのが「自分史」です。
高齢化社会とは、さまざまな知恵や経験を蓄えた方たちが数多くいる世の中ということ。
そうであるなら、高齢者の貴重な経験や知識、想いを「自分史」という形にして残し、広く世間に知ってもらうことは、きっと後に続く人たちにとっても貴重な継承となるはずです。
長年にわたって蓄えてきた自分の経験や知識、想いは、その人だけのもの。
でも、個人の思い出の中にとどめておくのは、大変惜しい。
だから「自分史」なのですね。
想いを込めた「自分史」を、電子書籍で手軽に
すでに世の中には「自分史」をテーマにした自費出版本が数多く生まれています。
書店に並ぶことは少ないようですが、それらの書籍は、書き手のさまざまな経験から紡ぎだ出される貴重な知識、熱い想いがたくさん詰まっているはずです。
それに書き手にとってはおそらく生涯最後の労作ですから、できるだけ手間ひまかけて、できるだけいいもの後に残るものを、と願うことでしょう。
ただし、『自費』で出版ですから、お金がかかります。書くこと自体は、自分の力でコツコツと進めていくことはできるかもしれませんが、やはり出版となれば話は別。
当然のことながら紙や印刷代がかかりますし、表紙や装丁に凝りたいとか、イラストや写真も入れたい、となれば、さらに費用かかさみます。また書店に並らばせたいとなれば、専門の配本会社に委託することになりますから、こちらもマージンが発生します。
そんなにお金はかけられない。という方には、では電子書籍での出版が候補に上がります。
電子出版であれば、パソコンやタブレット、スマートホンで読むことができるので、紙代や印刷代はかかりません。イラストや写真の加工や編集もバソコンを使えば簡単でスピーディにつくれるので、安価にできます。そしてなにより、電子本は街の書店ではなく電子書店に置けばいいので流通コストがかかりませんし、返品もありません。
いいことづくめの電子本。自分史を書いて公表するのであれば、十分検討に値すると思うのですが、いかがでしょうか?
課題となるのは文章力
むしろ「自分史」を書く上で大事なのは、書く行為そのもの、つまり文章力といえます。
文章力が足りないために、熱い想いを込めた『自分史』が、後に続く世代にとって貴重な金言の宝庫になっている、とはいいがたい例も少なくないようです。
理由としてあげられるのが、文章がわかりにくくて何をいいたいのかよくわからない、ということ。また状況の説明が不十分で、何が起きたのかよく理解できない。あるいは自慢話ばかりで、そこに至った後の経験知や反省や後悔から生まれる教訓がほとんどなく、読んでいて鼻につく、といったことが上げられるようです。
なぜこんなことが起きるのでしょうか?
文章を書くには、やはり文章力が必要です。文章力とは、主語・述語、修飾語と被修飾語の関係なと日本語の文法はもちろんですが、語彙の豊富さや使い分け、句読点の打ち方、といったことに関する細かい知識も必要です。こうしたことの積み重ねが、文章をわかりやすくするためにはとても大切なのです。
またできあがった文章には、誤字や脱字もあるでしょうから、何度かの校正や修正も必要です。
さらに読んだ人に納得してもらうためには、背景となる客観的な情報の記述や、そのための調査も大事になります。
書く前にまずは企画・構成を考えよう
そもそも書籍などのある程度まとまった文章を書くためには、最低限の前提として、誰に、何を、どう伝えるか、といった企画を考える作業が必要になります。
さらにこの企画をどう文章に落としこむかといった全体を見渡す構成力、それを具体的にするための章立て、といった作業も必要になります。
構成力とは、簡単にいえばこれから書こうとしている文章の伝えたいことを、もっともよく伝えるための順番のこと。具体的には章立てを決めることですが、なにを、どういう順番で、どう文章にすれば、もっとも説得力が増すか、ということは文章を書く前に十分に検討吟味しておくことが大切になります。
その後で本文を書いていくわけですが、途中でイラストや写真を入れるのであれば、こちらも企画構成の段階で、なにを、どこに入れるのか、といったことをできるだけ決めておいて、準備をしておくことも大切です
つまり、自分史を書く上では
企画⇒構成⇒章立て⇒執筆⇒校正⇒修正⇒再校正
といった作業がどうしても必要になるわけで、さらにイラストや写真、グラフなどを掲載するときは、ほぼ同時並行的にそれらの作成作業も発生することになります。
とはいっても、イラストを書くには絵心も必要ですし、写真やグラフの加工・作成にはパソコンや専門のソフトの知識が不可欠です。
そうしたさまざまなことに留意して「自分史」をものにするのは、なかなか大変なのではないでしょうか。
もちろん自分ですべてこなせる、という人は全然OKですが、ちゃんとしたスキルを持った人に依頼するのも一つの方法でしょう。
読者代表人の声を聞こう
そしてもう一つの注意点が、ちゃんとした読み物に値する自分史になっているか、ということです。
自分だけの自分史を書いていくと、つい自家撞着、自己憐憫、自己満足などの負の感情が暴走しやすくなります。
でも公表を前提としている書籍は、あくまで読者あってのもの。これから書き記そうとするきわめて個人的な経験や知恵、想いを、まっすぐに読者に届けるためには、しっかりとした客観性を持つことがとても大切です。でもこれがなかなか難しいのですね。
だとすれば近くに読者の代表として率直に感想をいってくれる、もっといえば苦言を呈してくれる、具体的にはどこをどう直したり、加筆修正すればいいのかを適切にアドバイスしてくれる人が近くにいることがベターでしょう。
近しい人とは、家族、親戚、友人でもいいですし、書籍編集の経験者などから意見を聞くのも有効だと思われます。
電子書店にアップするのもなかなか大変
さて、ようやく出来上がった原稿は、いよいよ電子書籍にします。ただ完成したばかりの原稿は、おそらくMSWordやテキストなど電子データのフォーマットでしょう。これを電子書籍に変換するには、もうひと手間かかります。電子書店のなかには、Wordでの入稿を是としているところもありますが、多くが独自フォーマットを前提としており、それらさまざまな入稿方法に対応するのはなかなか面倒です。勢い、数店の限られた電子書店のみに出店することになり、より多くの人の目に触れてほしいという機会は損なわれてしまいます。
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もしあなたが「自分史」を書いて多くの人に公開してみたいと思っているのなら、上記の点に留意していただければ、よりよい知恵と知識の財産として、素敵な書籍を完成させることができるでしょう。
そしてプロの編集者やライター、校正者のアドバイスやヘルプの必要性を感じていただけるのであれば、ぜひお気軽に本サイトにご相談ください。